「脱衣所天国」ネーミング秘話
INTRODUCTION
「脱衣所天国」...この商品のネーミングを決める際には社内でも侃々諤々の議論が繰り返されました。いわゆる「ボツ」になったネーミング案は、最後まで「脱衣所天国」と王座を争ったものから「一発芸」なモノまで、優に100を数えます。ここでは最終的に「脱衣所天国」に決定されるまでの秘話をご紹介します。
開発コードは「DM3」
実はHEATECではかつて「ドライメイト」という名前の商品を製造販売していました。この「ドライメイト」今で言う浴室暖房乾燥機のはしりでした。当時は浴室内に暖房機を埋め込み設置することができませんでした。そのため、本体を脱衣所に設置し浴室の壁を開口して脱衣所との間にダクトを通して、浴室と脱衣所の両方に切り替えで温風を吹き出す商品を開発しました。浴室暖房・浴室乾燥・脱衣所暖房・ドライヤーとマルチロールでご使用頂ける「ドライメイト」は隠れたヒット商品となり、20年以上経った今でも多くのお客様にお使い頂いています。
「ドライメイト」は初代・2代目と販売が続きました。今回開発する新商品はその3代目に当たるということで、当初の社内コードはそのまま「ドライメイト3」、略して「DM3」と呼ばれていました。中には未だについ口を滑らせて「ドライメイト」と言ってしまう社員がいるほどに、「DM3」というコードは浸透していたのです。
「ドライメイト」の名前を引き継ぐ功罪
もう20年前のこととは言え、今でも多くの方に「ドライメイト」と言えば「あぁ、そんな商品、前にあったね」と言っていただけます。それほど一時は浸透した商品名でした。新商品に「ドライメイト」の名前を冠すれば、労少なくして多くの方に覚えて頂ける(あるいは想い出して頂ける)と考えるのは、古くからの営業マンでなくても当然のことでした。だからこそ「DM3」が長く社内コードであり続けた訳なのです。
しかし、一方では20年前の商品のネーミングに頼り続けてもいいものか、そもそも20年前の商品と今度の新商品は同じコンセプトのものなのか?20年を経てコンセプトも商品も進化を遂げているのではないのか?このような想いがあることもまた事実でした。
まずは商品名を「変える」のか?から
そこでまずは商品名を変えるのか?から議論が行われました。前述の通り名前を変えない、つまり「ドライメイト」の名前を承継するのは一番簡単な選択肢でしたし、又、多くのお客様にスムーズに提案できそうでした。「ドライメイト3」という商品名はとても魅力的な商品だったのです。それでも敢えて「名前を変える」ことを決意しました。20年の時を経て進化したHEATECとその商品には、新しい名前が相応しい。過去を守るのではなく「未来を掴み取る」。その決意とともに新商品には新しい名前を冠することに決定しました。
どんな方向で名前を付けていくのか?
それでは新商品の名前はどのような方向でつけていくのか?ヘタな名前をつけるくらいなら「ドライメイトの方が良かった」ということになりかねません。名前を変えるというのは大変重い決断であったことに、改めて気づかされます。
さて、そのネーミングの方向性ですが、それこそ十人十色。様々なアイディアが出されました。そもそもこの新商品、コンセプトが「1台3役の脱衣所マルチ涼風・暖房機」です。「ハイパー暖房」「強力涼風」「ハンズフリー・ドライヤー」の3大機能のいずれにフィーチャーしてネーミングしていくのか?それだけでも沢山の候補が挙がります。その上で、機能を表す単語を繋げて商品名をつけるとか、コンセプトを言葉に置き換えてみるとか、ギリシャ神話の神様から名前を頂くとか...ここで実際にいくつか挙がった商品名の候補をご紹介しましょう。「ホットストーム」「サザンウィンド」は機能を表す英単語からの命名例です。コンセプトから採った例では「幸せの風」「優風」「パワーメイト」などがありました。そして神様から頂いた名前例としては「アイオロス」「シルフィード」が挙げられます。それぞれの社員がそれぞれのアイディアを推し、ほとんど社内は騒然となるほどの熱意を持ってネーミングに当たりました。
一部営業マンの「フライング事件」
そんな中、一部営業マンの「フライング事件」が起こります。実は「脱衣所天国」の商品開発の中で一番最後まで時間を要したのはネーミングでした。逆の言い方をすればネーミングが決まる頃には、開発はほとんど終了していました。そんな中、正式発表の前に一部のお客様に新商品の事前紹介行っている時、ある営業マンが商品名候補として「脱衣所天国」をリークしていました。「リークしている」と言っても悪い意味ではなく、むしろお客様の反応を調査していた、と言うほうが実体に近いのですが、これが反応がすこぶる良かった。まぁ、営業マンとしては「既成事実を作ってしまおう!」と考えたのかもしれませんが、商品名のフライング告知であった訳です。しかし、この名前を聞いたお客様に残した印象はとても強かったらしく、その後も引き続き「脱衣所天国はどうした?」とのお問合せを頂くことになりました。そして名前のインパクトの大切さを改めて社内に教えてくれました。
結局この商品は「何なんだ」?
こうして新商品名が百花繚乱の如く挙げられるようになると、基本に立ち返る必要があります。「結局この商品は何なんだ?」この疑問に答えること、違う言い方をすれば「この商品の開発理念」を具現化するネーミングを行うことです。HEATECはこの新商品を作ることで、世の中にどう貢献したいのか?改めて自問が始まります。
そして「脱衣所天国」に
「脱衣所」とはどんなところでしょうか?冬は寒いのに、夏はムシ暑い。狭い場所で且つ部屋の滞在時間も短い。結果としてあまり設備の導入も進んでいない。冬場の脱衣所の寒さのせいでヒートショックを起こして倒れてしまうご高齢者が多く危険な脱衣所。せっかくのお風呂上りなのに、又すぐに汗をかいてしまう程ムシムシする脱衣所。シャンプー後に髪の毛を乾かすのに20分も30分もかかるドライヤー。そんな脱衣所の危険・不快・不便を解消し「脱衣所を快適な空間にすること」。これがこの商品の理念でした。そのために2,200Wのハイパー暖房、13.1m/secの強力涼風、3.9m3/minの大風量を搭載したはずなのです。
そう「脱衣所を快適な空間にする」その理念を具現化した商品名として最終的に「脱衣所天国」と命名されたのです。
ネーミング大賞第4位受賞!!
こうして紆余曲折を経てネーミングされた「脱衣所天国」。お陰様で多くのお客様に「面白い名前だね」「覚えやすくていいよ」「何か気に入った」と、中々ご好評を頂いております。そのような効果が評価され日刊工業新聞社様主催の「第20回読者が選ぶネーミング大賞」で、ビジネス部門第4位を受賞致しました。投票頂いた方からは「レトロで昭和な感じ。でもちょっと色っぽいことばで気になる」「この名前を見て内容が気にならない人はいないぐらいインパクトがある」「景気の悪い時代に天国とは面白い」など、多くの好意的なコメントを頂きました。
そして妄想は膨らみ...
商品名が「脱衣所天国」に決定すると途端に妄想が膨らみました。「TVCFを作成しよう!」「BFMには(学園天国)を使おう!」「小泉今日子さんにイメージキャラクターをやって頂こう!!」etc...いずれも現時点では実現していませんし将来的にも実現しないのかもしれませんが、それでもネーミングにはそういう妄想を引き出す一種の魔力があるのかもしれません。
以上、「脱衣所天国」がなぜ「脱衣所天国」になったのか?簡単にご紹介させて頂きました。カタログをお渡ししたり展示会でお話しをさせて頂いたり、多くの場面で多くのお客様に脱衣所天国をご紹介しております。そして、そのいずれの中でも、多くのお客様にご好評を頂いております。それにはやはり、「脱衣所天国」というネーミングも大きく寄与しているのではないか、と思っております。